Agent SDKとは?AIエージェントを構築するための最新ツールを徹底解説
「Agent SDK」とは、OpenAIが2025年3月に正式リリースしたAIエージェント開発用のPythonライブラリです。
複数のエージェントを組み合わせて高度なタスクを効率的に自動化できるため、業務効率化を考える企業から注目が集まっています。
本記事では、Agent SDKの基本的な構成要素や環境構築、実際の使用例から最新の組み込みツールまでを具体的に解説します。
導入時の注意点もあわせて理解し、自社での効果的な活用につなげてください。
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Agent SDKとは
Agent SDKとは、OpenAIが2025年3月に正式リリースした、AIエージェント開発を支援するためのオープンソースPythonライブラリです。
このSDKを利用することで、複数のAIエージェントを連携させ、複雑なタスクを自動化することが可能となります。
従来の実験的なフレームワーク「Swarm」を大幅に改良し、本格的な本番環境での利用を想定した設計となっています。例えば、顧客対応やデータ分析などの業務において、各エージェントが専門的な役割を担い、効率的なワークフローを構築できます。
Agent SDKを構成する4つの基本概念
(出典 OpenAI)
Agent SDKを理解する上で4つの基本概念が重要です。
これらを組み合わせることで、柔軟で強力なマルチエージェントシステムを構築できます。
基本概念1(エージェント)
エージェントは、大規模言語モデル(LLM)をベースに、これ以降で説明する「ハンドオフ」、「ガードレール」、「トレース」設定を持たせたものです。
これによって、複数の専門家が協働しているように複雑タスクを遂行することができます。
基本概念2
ハンドオフは、エージェント間で処理を引き継ぐ仕組みです。
例えば、ユーザーの質問がスペイン語であれば、スペイン語対応のエージェントに処理を引き継ぐことが可能です。
基本概念3
ガードレールは、エージェントの入出力を検証し、安全性や品質を確保するためのチェック機能です。
例えば、ユーザー入力に個人情報が含まれていないか、エージェントの出力が不適切な表現を含んでいないかを確認します。
基本概念4(トレース)
トレースは、エージェントの実行過程を追跡・可視化する機能です。
デバッグやワークフローの最適化に役立ち、外部ツールとの連携も可能です。
Agent SDKの環境構築方法(Mac)
Agent SDKを実際に使用するためにはPCの環境構築をする必要があります。
以下の手順を参考にしてみてください。
1.Pythonの仮想環境を構築
ターミナルで以下のコマンドを入力して、仮想環境を構築します。
python3 -m venv myenv
source myenv/bin/activate
2.Agent SDKのインストール
ターミナルで以下のコマンドを入力して、Agent SDKをインストールします。
pip install openai-agents
注意: インストール前にOpenAI APIキーの設定が必要です。OpenAI PlatformでAPIキーを取得し、環境変数として設定してください。
export OPENAI_API_KEY=sk-...
Agent SDKの使用方法
ここでは、実際にPythonコードを示しながらAgent SDKを使ったアプリケーションを作成していきます。
実際の使用例を見ながらAgent SDKが持つ機能を紹介します。
簡単なエージェントの構築
Agentクラスを使用して、新しいエージェントを作成します。
以下のPythonコードは、「助手」という名前で「あなたは役に立つアシスタントです」という指示を与えてエージェントを生成し、再帰に関する俳句を作るよう指示した例です。
下の画像のように出力されています。
今はHandoffといった機能を付していないので通常のLLMによる応答と差はありません。
ストリーム出力
エージェントの応答をリアルタイムでストリーミング出力することで、長い応答でも逐次表示され、待ち時間を短縮できます。
以下のコードでChatGPTからの応答を逐次的に出力することができます。
Handoffs(ハンドオフ)の使用
エージェント間でタスクを委譲(ハンドオフ)することで、特定のタスクを最適なエージェントに任せることが可能です。
例えば、言語に応じて英語またはスペイン語のエージェントにハンドオフすることができます。
以下のコードでハンドオフを実装することができます。
例ではスペイン語で質問をしているので、内部的にはまず最初にトリアージエージェントが呼び出され、スペイン語エージェントにハンドオフされ、最終的にスペイン語エージェントが結果を出力しています。
外部ツールの実装
エージェントが外部機能を利用できるようにツールを作成します。
例えば、天気情報を取得するツールを定義し、エージェントがそのツールを利用して情報を提供することが可能です。
getweather関数ではcityを引数に受けとって必ずThe weather in {_city} is sunnyと返すように定義しています。
そのため、天気について尋ねた場合ツールとして設定されたget_weather関数が呼び出され、この結果をもとに最終的な出力が生成されます。
Agent SDKを用いた活用例と最新機能
Agent SDKを活用することで、以下のようなシチュエーションでAIエージェントを構築することができます。
組み込みツールとの連携
2025年3月のリリースに伴い、Agent SDKはWeb検索、ファイル検索、コンピュータ使用などの組み込みツールとの連携が可能になりました。
これらのツールは従量課金制で、Web検索は1,000クエリあたり25〜30ドル、ファイル検索は1,000クエリあたり2.50ドル(1GB無料)となっています。
ショッピングAIエージェントの開発例
ショッピングAIエージェントは、Web検索機能と組み合わせて商品情報を収集し、購入手続きを自動化するエージェントです。
リアルタイムの価格情報や在庫状況を確認しながら、複雑なタスクをハンドオフ機能を用いて遂行することができます。
カスタマーサポートAIエージェントの開発例
カスタマーサポートAIエージェントは、問い合わせ内容に合わせて最適な専門エージェントへ割り振りを行い、迅速かつ正確に対応できるエージェントです。
ファイル検索機能により、FAQや過去の対応履歴を瞬時に参照し、より精度の高い回答を提供できます。複数のエージェントをスムーズに連携させるAgent SDKのハンドオフ機能が大きなポイントとなります。
実際の導入事例
Coinbaseでは、Agent SDKを活用してAgentKitを数時間で構築し、暗号通貨ウォレットとの連携を実現しました。
Boxでは、Agent SDKとWeb検索を組み合わせ、企業の内部データと公開データを安全に統合検索できるエージェントを短期間で開発しています。
Agent SDK導入の注意点
Agent SDKを導入する際には、以下の点に注意する必要があります。
これらの課題に対して、適切なガバナンスや倫理的指針の策定が求められます。
コストと料金体系の理解
Agent SDKの利用には、基本的なAPIトークン使用料に加えて、組み込みツールの従量課金が発生します。
特にWeb検索機能(1,000クエリあたり25〜30ドル)やコンピュータ使用機能などは高額になる可能性があるため、事前にコスト試算を行うことが重要です。
信頼性と監視体制
コンピュータ使用機能などの高度な機能は、現在の成功率が約38%程度(OSWorldベンチマーク)と限定的です。
本番環境での利用には人間による監視体制の構築が不可欠です。
倫理的課題とガバナンス
AIエージェントの導入に伴い、雇用への影響やデータの取り扱いに関する倫理的課題が生じる可能性があります。
また、エージェントが扱うデータのプライバシー保護や、偏見のない公平な判断を行うための対策が必要です。
セキュリティと意思決定の透明性
AIエージェントの意思決定プロセスを透明化し、ユーザーのプライバシーを保護することが重要です。
OpenAIは安全性対策として、プロンプトインジェクション対策や機密タスクの確認プロンプトなどを組み込んでいますが、個人情報の取り扱いについて明確なポリシーを策定し、データ漏洩や不正利用を防ぐ対策を講じることが求められます。
まとめ
Agent SDKは、2025年3月に正式リリースされたOpenAIのAIエージェント開発を支援する強力なオープンソースツールであり、業務の自動化や効率化に大きく貢献します。
Web検索、ファイル検索、コンピュータ使用などの組み込みツールとの連携により、従来以上に実用的なエージェントシステムの構築が可能になりました。
しかし、導入に際してはコスト管理、信頼性の課題、倫理的配慮やプライバシー保護などの注意点を十分に考慮し、適切なガバナンスのもとで活用することが重要です。
これらを踏まえ、Agent SDKを効果的に活用することで、組織の競争力向上やユーザー体験の改善につながるでしょう。