AIと著作権の全体像を解説|裁判事例・企業の対策・国内外の規制動向まで網羅

最終更新日: 2025-04-15

生成AIの急速な発展に伴い、著作権をめぐる新たな法的課題が浮上しています。AIが作成したコンテンツの権利は誰に帰属するのか、他者の著作物をAIが学習することは合法なのか。

企業がAIを活用する際には、こうした著作権問題への理解が不可欠です。本記事では、AI著作権問題の基本概念、著作権侵害の具体的パターン、国内外の主要裁判事例、最新の法規制動向、そして企業が取るべき実践的な対策まで網羅的に解説します。

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仲 思成
監修者: 仲 思成

AI導入.comを提供する株式会社FirstShift 代表取締役。トロント大学コンピューターサイエンス学科卒業。株式会社ANIFTYを創業後、世界初のブロックチェーンサービスを開発し、東証プライム上場企業に売却。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにコンサルタントとして入社。マッキンゼー日本オフィス初の生成AIプロジェクトに従事後、株式会社FirstShiftを創業。

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AI著作権問題とは?

AIと著作権
出典:canva

AI著作権問題とは、生成AIが創出したコンテンツや、AIの開発・学習過程における著作物の利用に関連して生じる法的課題です。日本の著作権法では、AIには著作権が認められず、人間の関与度合いによって権利の有無が判断されます。

具体的には、AI生成物の著作権帰属や、AI学習のための著作物利用の適法性が主な論点となっており、企業の法務・知財部門にとって重要な検討課題となっています。

AI著作権問題が注目される背景

AIと著作権問題
出典:canva

AI著作権問題が注目されるようになった主な理由は、技術の急速な進化と普及にあります。生成AIの能力向上により、人間の創作物と見分けがつかないコンテンツが簡単に作れるようになりました

ChatGPTやMidjourneyなどの普及で、一般ユーザーも高品質なAIコンテンツを生成できる時代です。

同時に、著名クリエイターやメディア企業によるAI企業への訴訟が増加し、経済的影響も無視できなくなっています。

AIによる著作権侵害のパターン

AIと著作権侵害
出典:canva

AIによる著作権侵害には大きく3つのパターンがあります。

これから説明する「規制エンタメ作品への類似」「キャラクターの無断使用」「ニュース・論文などの無断学習と再生成」の各パターンを理解することで、企業はAI活用における法的リスクを事前に把握できます。

パターン1:規制エンタメ作品への類似

生成AIが既存の著名なエンタメ作品に酷似したコンテンツを生成するケースです。「〇〇風」「〇〇スタイル」などのプロンプトで特定作品の画風や世界観を模倣すると、著作権侵害のリスクが生じます

判断基準となるのは「依拠性」と「類似性」です。

依拠性は「原著作物へのアクセス可能性」によって認定され、類似性は「表現上の本質的特徴の直接感得可能性」で判断されます。

パターン2:キャラクターの無断使用

著名なキャラクターの特徴を持つ画像や動画をAIで生成するケースです。キャラクターは著作権だけでなく、商標権や不正競争防止法による保護も受ける場合があり、法的リスクが複合的になります

企業の公式媒体での使用は特に慎重な判断が求められ、「似ているが同一ではない」という主張は法的に脆弱なことが多いため注意が必要です。

パターン3:ニュース・論文などの無断学習と再生成

ニュース記事や学術論文などを無断でAIに学習させ、類似コンテンツを生成するケースです。ニュースサイトの記事を大量にスクレイピングしてAIを学習させる行為は、著作権侵害となる可能性があります

単なる事実やデータは著作権保護の対象外ですが、その選択や配列、表現方法には著作権が発生します。多くの学術データベースではAI学習目的でのデータ収集を明示的に禁止しています。

日本におけるAI著作権侵害の主要裁判事例

AI 著作権における裁判
出典:canva

日本国内外でAI著作権に関する法的紛争が顕在化しています。ここでは特に注目すべき2つの代表的な事例を紹介します。

これらの事例は、企業のAI活用における実務上の判断基準を考える上で重要な参考となります。

ウルトラマン画像生成訴(円谷プロダクション vs AIサービス企業)

2024年2月、広州インターネット法院は、中国のAI企業がウルトラマンに酷似した画像を生成できるサービスを提供したことに対し、著作権侵害と認定する判決を下しました。

この訴訟では、円谷プロダクションからライセンスを受けた中国企業が原告となり、複製権侵害と翻案権侵害で損害賠償と類似画像生成停止が命じられました。

ピクシブvsNovelAI事件(イラスト無断学習問題)

2022年末、「pixiv」に投稿されたイラストが「Novel AI」の学習データとして無断利用された疑いが浮上し、pixivは利用規約を改定。

同社はAIクローリング対策として「AI学習お断り」メタタグを導入し、他のイラストサイトも同様の防止策を強化するきっかけとなりました。

AI著作権に関する日本と海外の規制動向比較

AI著作権の国内と海外動向
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AI著作権に関する法規制は国や地域によって大きく異なる法的アプローチが取られています。グローバルに事業展開する企業にとっては、これらの違いを理解し適切に対応することが重要です。

日本の規制動向

日本では文化庁が2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、AI開発での著作物利用は「非享受目的」かつ「著作権者の利益を不当に害さない」場合に第30条の4で許容されるとの解釈を示しました。

海外の規制動向

米国では著作権局が「完全にAIが生成したコンテンツには著作権を認めない」方針を発表し、人間の創作的関与がある「AI支援作品」には著作権保護の余地があるとしています。

EUではAI法が成立し、AIシステムの透明性やリスク管理についての規制を強化しています。

自社の著作権を守るために企業が行うべき対策

AI著作権と対策
出典:canva

自社のコンテンツを保護するためには、複合的なアプローチが必要です。

ここでは「著作物の利用ポリシーの明示」「技術的保護手段の導入」「法律・契約による権利保護と監視体制の構築」という3つの効果的な対策について解説します。

著作物の利用ポリシーの明示

自社の著作物をAIによる無断学習から保護するには、明確な利用ポリシーを策定・公開することが重要です。

robots.txtファイルにAIクローラーへの制限を記載したり、サイト利用規約にAI学習利用禁止を明記したりする方法が効果的です。

技術的保護手段の導入

技術的保護手段を導入することで自社コンテンツの無断利用を効果的に防止できます。デジタル透かしやフィンガープリントの活用、メタデータへの保護情報の埋め込みなどが考えられます。

会員制やAPIアクセス制限など、複数の技術的対策を組み合わせることが推奨されます。

法律・契約による権利保護と監視体制の構築

法的・契約的なアプローチも重要です。著作権登録や著作権管理団体への登録、ライセンス契約へのAI利用条項の追加など、権利保護を強化しましょう。

インターネット上での自社コンテンツの無断利用を監視する体制の構築も重要です。

他社のAI著作権を侵害しないために企業が行うべき対策

AI著作権と対策
出典:canva

自社でAIを活用する際には、他社の著作権侵害リスクを最小化するための対策が欠かせません。

以下では「適切な生成AIツールの選定」「生成物のチェック体制の構築」「社内ルールの策定と従業員教育」という3つの重要な対策について詳しく説明します。

適切な生成AIツールの選定

自社のビジネスでAIを活用する際には、著作権リスクを最小化するためのツール選定が重要です。

学習データの収集方法や権利処理に関する透明性の高いサービスを選び、事業者の免責・補償条項を確認しましょう。

生成物のチェック体制の構築

AIが生成したコンテンツを利用する前に、検証プロセスを設けることが重要です。法務・知財部門によるAI生成物の審査プロセスを構築し、既存著作物との類似性を確認するツールを導入しましょう。

社内ルールの策定と従業員教育

組織全体でAI著作権リスクに対応するための体制づくりも重要です。許可されたAIツールのリスト化や、AI生成物の利用目的と範囲の明確化など、社内ガイドラインを策定しましょう。

従業員への基本的知識の研修も効果的です。

まとめ

AIと著作権の問題は技術の進化とともに変化し続ける領域です。企業は以下の5つのポイントを押さえることが重要です

  • 「規制エンタメ作品への類似」「キャラクターの無断使用」「無断学習と再生成」の3つの侵害パターンに注意が必要
  • 「ウルトラマン訴訟」「ピクシブvsNovelAI事件」など国内でも法的紛争が増加
  • グローバル企業は各国の規制の中で最も厳しい基準に合わせた対応が必要
  • 自社の著作権保護には「利用ポリシーの明示」「技術的保護」「監視体制の構築」が効果的
  • 他社の著作権侵害を避けるには「適切なツール選定」「チェック体制」「社内教育」が不可欠

AIと著作権の課題は企業の知的財産戦略の重要な一部です。今すぐにでも自社のAI活用ポリシーを見直し、法的リスクを最小化しながらAIの恩恵を最大化する取り組みを始めることをお勧めします。

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